業務改善の効果測定|改善前後を比べる指標と計算例

改善に取り組んで半年たつが、「結局どれだけ効果があったのか」と聞かれて答えられない。改善前の数字を残していなかった、改善後は件数が違うので比べられない、という状態です。この記事は、改善前に残す指標と、同じ条件で比べる方法、計算例を書いています。
IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」では、DX に取り組む日本企業のうち、目的に対して「成果が出ている」と答えた企業は6割弱で、米国とドイツの8割以上と差があります。IPA は、日本では「わからない」の回答が多く、取り組んではいるが成果が出ているかを追えていない企業が多いことを課題として挙げています。
2023年版の小規模企業白書の事例では、Jマテ.カッパープロダクツ(金属製品製造業・従業員300名)が、DX の費用対効果や評価指標を「既存業務の改善で削減できる業務時間」に置き換えたと紹介されています。目標は2022年末までに1,000時間の削減でした。結果は1,508時間の削減で、削減の状況は社内のグループウェアで共有していたとしています。この記事で分かるのは、効果測定で分けるもの、改善前に残す指標と条件、同じ条件で比べる方法、計算例、評価の担当と時期です。
効果測定で分けるもの:事前の試算・実測・費用の削減
「効果」という言葉には、3つの違うものが混ざっています。分けずに報告すると、「試算では100時間と言っていたのに」という食い違いが起きます。
- 事前の試算は、改善の前に「このくらい減るはず」と見積もった数字です。改善に着手するかを決めるために使います。実績ではありません。
- 実測は、改善の後に同じ条件で測った数字です。効果を示すのは、この数字だけです。
- 費用の削減は、実測した時間の削減が、実際の支出の減少(残業代・外注費・人員の配置換え)につながった分です。時間が減っても支出が減らない場合があるので、時間の削減とは分けて書きます。
報告では、この3つを別の欄に書きます。「試算○時間・実測○時間・うち支出の減少○円」の形にすると、読む側が混同しません。ProcessAI が出す削減時間の試算も、1つ目の「事前の試算」にあたります。

改善前に残す指標と、測定の条件
効果測定で最も多い失敗は、改善前の数字がないことです。改善を始める前に、次の4つの指標を、測定の条件と一緒に残します。測り方は業務量調査のやり方で扱っています。
- 時間。1件あたりの作業時間と、月の件数。掛け合わせて月の工数を出します。
- 品質。差し戻し・やり直し・誤りの件数。時間が減っても誤りが増えていれば、改善とは言えません。
- 処理期限。依頼から完了までの経過時間と、期限内に終わった割合。待ち時間の短縮は、この指標で示します。
- 担当できる人数。その業務を行える人の数。属人化の解消を示す指標です。
測定の条件は、期間、対象者、測り方(自己記録・観察・ログ)、繁忙期を含むかの4つを書きます。条件がない数字は、改善後に同じ条件で測り直せません。

同じ条件で比べる:件数・繁閑・難易度の補正
改善前と改善後で、件数が違うことは普通に起きます。月の工数をそのまま比べると、件数が減っただけで「効果があった」ように見えます。比べるのは、月の工数ではなく、1件あたりの時間です。
繁閑の違いも補正します。改善前を通常期に測り、改善後を繁忙期に測ると、効果が小さく見えます。同じ時期(月初と月末の両方を含む2週間など)で測るか、通常期と繁忙期を分けて比べます。
難易度の違いは、例外の件数で見ます。改善後に例外が多い月に当たると、1件あたりの時間が長くなります。例外の件数を別に記録しておき、「通常処理の1件あたり時間」と「例外の1件あたり時間」を分けて比べます。
時間・品質・処理期限を使った計算例
架空の例で計算します。改善前は、1件あたりの作業時間が60分、月120件で、月の工数は120時間でした。改善後は、作業時間が20分に減りましたが、RPA の出力を確認する時間が1件10分、RPA の設定を保守する時間が月に10時間、新たに発生しました。
この例の作業時間には、手戻りの時間を含めていません。1件あたりで比べると、改善前60分、改善後は作業20分+確認10分+保守5分(月10時間÷120件)で35分です。削減は25分で、月120件なら50時間です。確認と保守を入れずに「60分が20分になった」と報告すると、実際の2倍近い効果に見えます。
品質は、差し戻しの件数で比べます。改善前に月6件だった差し戻しが改善後に月2件なら、差し戻し1件あたりのやり直し時間(例: 30分)を掛けて、月2時間の削減として時間に加えます。作業時間の測定に手戻りを含めている場合は、この加算は行いません(二重に数えることになります)。処理期限は、期限内に終わった割合で比べます。改善前85%が改善後97%なら、そのまま割合で示し、時間には換算しません。
確認・保守の工数も含めて、誰がいつ評価するか
評価の担当は、改善を行った本人ではなく、部門タスクフォースの別の1人にします。本人が評価すると、確認や保守の時間が抜けやすくなります。評価の時期は、業務の周期に合わせます。月次の業務なら3か月後(3周期分)、季節の業務なら次の同じ季節です。「改善から3か月後」を一律の時期にしないでください。
郡山市は、2015年度から年度ごとに業務量調査を続け、全庁共通業務の割合が当初の14.0%から10.0%未満に下がったと公表しています。年度ごとの結果を公表し続けているため、10年の変化を示せています。企業でも、改善の前後の2回で終わらせず、同じ指標を定期的に測り続けると、次の改善の対象が数字で見つかります。
小規模企業白書の事例では、RPA による業務時間の削減状況を社内のグループウェアでリアルタイムに共有し、効果を可視化したことで、従業員から DX に関する積極的な意見が出るようになったと紹介されています。測った結果は、経営層へ報告するとともに、現場にも見える形で共有します。

改善前の業務フローと工程ごとの試算を短時間で用意したい場合は、ProcessAI をご検討ください。担当者が AI と会話するだけで、業務フロー図の初稿と削減時間の試算(事前の試算)が出ます。実測はこの記事の方法で行ってください。
よくある質問
- 改善前の数字を残していませんでした。今からできることはありますか。
- 改善後の数字を今から測り、それを基準にして次の改善を評価します。改善前については、システムのログ(入力日時・承認日時)が残っていれば、経過時間だけは後から取れます。担当者の記憶で改善前の時間を推定する場合は、推定であることを明記します。
- 時間の削減を金額に換算してよいですか。
- 「削減した時間 × 時間あたりの人件費」で試算できますが、実際の支出が減っていなければ「費用の削減」ではありません。時間の削減と、支出の減少(残業代・外注費など)は分けて書きます。
- 効果が出ていなかった場合はどうしますか。
- 測定の条件(件数・繁閑・例外)が同じかを先に確かめます。条件が同じで効果がなければ、改善の内容を見直すか、やめます。測って「効果がなかった」と分かることも、効果測定の成果です。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)