業務棚卸し表の作り方|項目・粒度・記入例

「部署の業務を棚卸ししてほしい」と言われて表計算ソフトを開いたが、列に何を置くか、1行をどこまで細かくするかで手が止まる。各部署から集めてみると、粒度が違って比べられない。この記事は、棚卸し表の項目と粒度を決め、各部署から集めて使える表にするまでの手順を書いています。
蒲郡市は、業務の集約・自動化・外部委託による効率化を目的として全業務の棚卸しを行い、その調査と分析の手法について支援を受ける仕様書を公開しています。同じ仕様書の別の項目である窓口手続の調査では、全件調査で対象を選び、詳細調査で利用頻度と課題をつかみ、課題分析で優先順位を決める、という3段階を取っています。編集部は、企業の棚卸しもこの順番で進めると表が改善の材料になると考えています。
2023年版の小規模企業白書は、デジタル化の取組段階が進んでいる企業ほど、ビジョン・目標の設定や業務の棚卸しを実施している割合が高いと述べています。この記事で分かるのは、棚卸し表とフロー図の違い、最初にそろえる項目と後から足す項目、粒度をそろえる記入例、各部署から集めて抜けを確かめる方法、更新の担当と時期の決め方です。
業務棚卸し表で整理すること、フロー図との違い
業務棚卸し表は、ある範囲(部署・拠点・会社)にどんな業務があるかを、1業務1行で一覧にしたものです。「何があるか」と「どのくらいあるか」を把握するための表で、「どの順番で行うか」は扱いません。順番と受け渡しは、業務フロー図が扱います。
両者の使い分けは、棚卸し表が先です。棚卸し表で業務の全体と数量をつかみ、件数が多い業務や複数の部署が関わる業務を選んで、フロー図を描きます。全業務のフロー図を描こうとすると、期限内に終わりません。フロー図の描き方は業務フロー図の作り方で扱っています。
棚卸し表の用途は3つです。改善の対象を選ぶこと、自動化や外部委託の候補を選ぶこと、担当者が代わっても業務が抜けないように引き継ぐことです。蒲郡市の仕様書では、全業務棚卸しの目的を「業務の集約、自動化や外部委託等による業務の効率化」としています。
最初にそろえる項目と、後から足す項目
列を増やしすぎると、記入する側が埋められずに止まります。最初は7列に絞り、必要になったら後から足します。次の列構成は、編集部が提案する記入項目です。
- 業務名。「請求書を発行する」のように、動詞で終わる形で書きます。
- 開始の合図。何が起きたらその業務が始まるか(メールが届く・月末になる・システムの通知など)。
- 担当できる人数。実際にその業務を行える人の数。1人なら属人化の候補です。
- 頻度。毎日・毎週・毎月・随時のどれか。
- 月あたりの件数。概算で構いません。少ない月と多い月があれば両方書きます。
- 1件あたりの時間。担当者の見積もりで構いません。見積もりであることを欄外に書きます。
- 使うシステム・帳票。入力先のシステム名と、作る書類の名前。
後から足す列は、「例外の有無」「判断の有無」「担当者が1週間不在のときの影響」「自動化の候補か」の4つです。これらは、改善の対象を選ぶ段階で使います。最初から入れると、記入する側が判断に迷って手が止まります。
1行に何を書くか:粒度をそろえる記入例
各部署から集めた表が比べられない最大の原因は、1行の粒度が違うことです。ある部署は「経理業務」と1行で書き、別の部署は「金額を入力する」「上長に回す」「印刷する」と3行に分けます。1行の目安は、「1人の担当者が、1つの開始の合図から、1つの成果物を出すまで」です。
粗すぎる行は、件数も時間も付けられません。細かすぎる行は、行数が増えて全体が見えなくなります。「件数と時間を付けられる最大の粗さ」で1行にします。見本の行を1〜2行作って配ると、各部署の粒度がそろいます。
各部署から集めて、重複・抜け・不明点を確かめる
複数の部署から集めるときは、7列に「部署」の列を1つ足します。表を配って記入を待つだけでは、集まりません。見本行を付けて配り、記入の期限を1週間にし、期限の翌日に1部署30分の確認の時間を取ります。確認では、部署の帳票一覧とシステムの画面一覧を横に置き、「この帳票を作る業務はどの行ですか」と突き合わせます。帳票があるのに行がなければ、抜けです。
重複は、2つの部署が同じ業務を別の名前で書いている状態です。開始の合図と成果物が同じなら、同じ業務の可能性があります。ただし、同じ案件を2つの部署が分担しているのか、同じ処理を別々の案件で行っているのかは確かめます。同じ案件の同じ処理なら、どちらかの行に寄せ、部署の列に両部署を書きます。不明点は、推測で埋めずに「不明」と書き、確認相手と期限を付けて残します。

作って終わりにしない:管理担当と更新の時期
棚卸し表は、作った翌月から古くなります。表の先頭に、作成日・管理担当・次回更新日を書き、更新は半年に1回と、担当者が代わったときの2つの時期に行います。更新の担当は、各部署のタスクフォースの1人にします。
厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」は、業務が標準化されていない課題への対策として、仕事の棚卸しを行い、業務手順書を作成し、繁忙期の新規人材の教育に活用する取組を挙げています。棚卸し表は、表のままで終わらせず、手順書やフロー図の入口として使います。
棚卸し表で選んだ業務のフロー図を描く工程は、AI に任せる方法があります。ProcessAI は、担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から業務フロー図の初稿を生成します。棚卸し表の1行ごとに担当者が会話すれば、表とフロー図がそろいます。


棚卸し表で選んだ業務のフロー図を短時間で作りたい場合は、ProcessAI をご検討ください。担当者が AI と会話するだけで初稿ができます。
よくある質問
- 棚卸し表は何行くらいになりますか。
- 編集部の目安では、1部署で30〜80行に収まることが多いです。業務の数が多い部署では100行を超えることもあります。行数が多いときは、1行が「1つの開始の合図から1つの成果物まで」の粗さになっているかを確かめてください。
- 件数や時間が分からない業務はどう書きますか。
- 担当者の見積もりを幅で書きます(月10〜20件、1件15〜30分など)。見積もりであることを欄外に書けば、改善の優先順位を決めるには十分です。正確な数字が必要になった業務だけ、後から測ります。
- テンプレートをダウンロードできますか。
- この記事では、列の構成と記入例を本文に載せています。表計算ソフトで7列の表を作り、記入例の行を1行目に入れれば、そのまま使えます。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)