業務の属人化を解消する手順|原因の切り分けから、マニュアルとフロー図の使い分けまで

担当者が休むと、その業務が止まる。異動や退職のたびに、引き継ぎで数週間を失う。「属人化を解消しろ」と言われてマニュアルを書かせたが、半年後には誰も見ていない。この記事は、そうした状態を、原因の切り分けから直すための手順を書いています。
2025年版の中小企業白書によると、デジタル化の段階が「業務フローの見直し」を例に含む段階3に進んだ事業者では、人材面(働き方の改善、業務負担軽減による人材確保・定着など)で効果を感じている割合が59.0%でした。段階2では37.1%で、差は21.9ポイントです。業務の流れを見直す段階に進んだ事業者ほど、人材面の効果を感じている割合が高くなっています。
読み終えると、属人化を4つの状態に切り分ける方法、状態ごとの解消の手順、フロー図・チェックリスト・マニュアル・判断基準表の使い分け、再発させない運用が分かります。
属人化とは何か:困るのは「詳しいこと」ではなく「止まること」
属人化とは、ある業務の進め方や判断の基準が特定の担当者の頭の中にだけあり、その人がいないと業務が止まるか、品質が落ちる状態です。担当者が業務に詳しいこと自体は問題ではありません。問題は、その知識が記録されておらず、他の人が同じ結果を出せないことです。
属人化している中身は、「手順(やり方)」と「判断(どちらにするか)」の2つに分かれます。さらに、記録があるかないかで分けると、4つの状態になります。どの状態かによって、効く対策が違います。
- A. 手順が頭の中にある。記録が何もない状態です。解消しやすい型なので、最初に手を付けます。
- B. 判断基準が頭の中にある。手順は分かるが、「この取引先は特別扱い」のような判断の基準が本人にしか分からない状態です。
- C. マニュアルが古い。記録はあるが、実態とずれている状態です。古いマニュアルを信じて作業すると、本人に聞き直すことになります。
- D. 基準はあるが例外が多い。判断基準は書かれているが、例外のたびに本人が決めている状態です。
属人化が起きる4つの原因
対策を立てる前に、なぜその業務が属人化したかを確かめます。原因が残ったまま記録を作っても、記録が更新されずに元に戻ります。
- 担当者が1人しかいない。業務量が1人分しかなく、2人目を付ける理由がないまま年数が経った場合です。
- 記録する時間が業務に含まれていない。記録は「余裕があるときにやること」になっていて、評価の対象でもないため、後回しになります。
- 例外対応が積み重なった。最初は手順通りだった業務に、取引先ごとの例外が増え、例外の処理が本人の記憶にだけ蓄積した場合です。
- 引き継ぎが口頭だけで行われた。前任者から後任者へ、記録を作らずに口頭で引き継ぐことが繰り返されると、引き継ぐたびに情報が欠けていきます。
解消の5つの手順
手順1. 止まると困る業務を洗い出す
部署の業務を一覧にし、業務ごとに「担当できる人数」と「担当者が1週間不在のときの影響」の2列を足します。担当できる人数が1人で、影響が「顧客への納期や請求に関わる」業務から着手します。すべての業務を一度に解消しようとすると、どれも終わりません。
手順2. 4つの状態のどれかを切り分ける
担当者に業務ヒアリングを行い、手順と判断の分かれ目を聞きます。既存のマニュアルがあれば、ヒアリングの内容と突き合わせて、どこがずれているかを確かめます。この時点で、A〜D のどの状態かが分かります。
手順3. 手順は、フロー図とチェックリストに記録する
A と C の状態では、まず業務フロー図を作ります。担当者ごとのレーンを分け、受け渡しと判断の分かれ目を描きます。次に、担当者1人の作業について、抜けを防ぐチェックリストを作ります。画面操作の手順が必要な作業だけ、マニュアルを書きます。最初から詳細なマニュアルを書くと、作る時間がかかり、更新もされません。
手順4. 判断は、基準と過去の判断例に記録する
B と D の状態では、判断の分かれ目ごとに「何を見て、どう決めるか」を表にします。基準を言葉にできない場合は、過去の判断例を10件ほど集め、「この条件のときはこうした」という形で並べます。例を並べると、本人も気づいていなかった基準が見えてきます。例外が多い D の状態では、例外の件数を数え、件数が多いものは基準に取り込み、まれなものは上位者の判断に残す、と決めます。
手順5. 2人目が実際に回してみる
記録ができたら、担当者以外の人が、記録だけを見て実際に1件処理します。本人には口を出さずに見てもらい、止まった箇所を記録に追記します。この試験を通らない記録は、引き継ぎに使えません。
マニュアルとフロー図の使い分け
属人化の対策で「マニュアルを作る」とだけ決めると、何を書くかが人によって変わります。記録の種類を目的で分けると、作る量が減り、更新もしやすくなります。
- 業務フロー図は、複数の人と部署の間の流れと受け渡しを記録します。全体像を共有する用途で、最初に作ります。
- チェックリストは、1人の作業の抜けを防ぎます。作業の順番と確認項目を箇条書きにしたもので、作るのに時間がかかりません。
- 操作マニュアルは、システムの画面操作のように、見ないと再現できない手順を記録します。必要な作業に限って作ります。
- 判断基準表は、判断の分かれ目ごとに、見る項目と決め方を記録します。過去の判断例を添えます。
総務省の令和7年版情報通信白書では、生成 AI の活用による自社への影響として、日本企業では「業務効率化や人員不足の解消につながる」が最も多く挙げられています。記録を作る作業のうち、ヒアリングの録音から手順を起こす工程と、過去の判断例を整理する工程は、生成 AI が得意とする文章作成の補助にあたります。

再発させない運用
記録を作っただけでは、業務が変わったときに C の状態(マニュアルが古い)に戻ります。次の3つを運用に組み込みます。
- 更新の担当と見直し日を決める。記録の冒頭に、作成日・更新担当・次回見直し日を書きます。見直しは半年に1回が目安です。
- 例外が起きたら、その場で記録する。例外対応を本人の記憶に残さず、判断基準表に1行追加するルールにします。月に1回、増えた例外を見て、基準に取り込むかを決めます。
- 担当を定期的に入れ替える。1年に1回、2人目が1か月間その業務を担当する期間を作ります。記録が実態とずれていれば、ここで見つかります。
ヒアリングと記録の作成を AI に任せる方法もあります。ProcessAI は、担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から業務フロー図の初稿を生成します。担当者が自分で記録を書く時間を取れない場合でも、会話するだけで第1版ができるため、手順3の着手が早くなります。


担当者に記録を書く時間がない場合は、AI がヒアリングして業務フロー図の初稿を作る ProcessAI をご検討ください。
よくある質問
- すべての業務の属人化を解消する必要がありますか。
- ありません。担当者が1週間不在のときに顧客や請求に影響が出る業務から順に解消します。影響が小さい業務は、担当者が複数いる状態を作るだけで十分です。
- 担当者が忙しくて、記録を作る時間が取れません。
- 担当者本人に書かせず、別の人がヒアリングして記録を作ります。本人の負担は、45〜60分のヒアリングと、できた記録の確認だけにします。AI にヒアリングさせる方法もあります。
- 属人化と、担当者のスキルが高いことは、どう違いますか。
- スキルが高い担当者がいること自体は、組織の強みです。問題になるのは、その人の手順や判断が記録されておらず、他の人が同じ結果を出せない場合です。記録があれば、スキルの高い人の判断を組織の基準にできます。
- マニュアルを作ったのに使われません。なぜですか。
- 多くの場合、マニュアルが実態とずれているか、作業中に見るには長すぎるためです。作業中に見るものはチェックリストに分け、マニュアルは画面操作など必要な箇所に限ってください。更新の担当と見直し日も決めます。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)